猫公園にて奇妙な男を見る。
その男は私の隣りに車を停めると、後部座席から猫のエサを取り出し、群がる野良猫たちに与へ始めた。ドアを開けた時、私の車にガツンと当たったが、男はまったく知らんぷり。とても醜い中年男で・・・ひょっとしたら、私と同じくらゐの歳かも知れない。分厚いメガネ、髪はネトネト、肥満体・・・いはゆる「キモい」といふやつだ。私は彼のことを知ってゐた。彼が公園のゴミを拾ってゐるのを、これまでに何度も見かけたことがあるのだ。
エサをやり終へると、彼はおもむろに着替へ始め・・・何と汚らしく、しまりのない裸だったらう! さうして彼は、私と彼の車の間の狭いスペースで、ながながと放尿し始めた。目と鼻のさきにトイレがあるのに! 私が車に乗ってるのに! まだ猫たちは食事中なのに! ・・・先達て車を停めた時、そこだけどうして湿ってゐるのか不思議に思ってゐたのだが、さういふわけだったのか。私は息を止めながら、パワーウインドウを閉める。
彼は運転席に戻り、煙草を吸ひながら新聞を読み始める。私は何だか怖くなり、そうっと車を出す・・・彼は私のことなど一顧だにしなかった。他人に、人間に興味がないのだ。
猫公園をあとにしながら、堕天使とはあんな感じなのかも知れないなと、ふと思った。
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