light the light
あおば

                    090215


ライト兄弟が初めて動力飛行に成功した後
兵器としての価値を見抜いた国々は
総力を挙げて飛行技術の開発を推進した
そう思っていたのだが
そう簡単には進まなかったようで
ライト兄弟の初飛行さえ疑る者も現れて
兄弟の発明が認められたのは
第一次大戦が終わって
日本にも軍用機が飛び回り
民間機ですら定期運行をした後であったと知ったときの
驚きは相当なもので
何ごとも油断大敵
本当のことは自明だから
黙っていても認められる
そう思っていた人々の心を苛む世界の常識だったようだ

光あるところに影が生じて
影からは
疑心が生じる
隈無く明るくすると
炭素消費量が嵩むと
横槍を入れられる
横槍は刺さると痛い
痛いどころか
出血多量で死んでしまう

横槍を携えた人たちが
一群となって市中を見回り
白熱電球を点けている者は居ないか
目を皿のようにして徘徊している
嫌な世の中だと思ってもう遅い
影も形も嫌いな人々が感性を鋭くして
横槍を携えて
群衆となって
市中を見回る
恐ろしい時代になった
白熱電球を愛好する者は
人でなしとして処刑される
流れる血で街路を明るく染めるのだと
群衆は歓喜の声で横槍を突き刺す
その
つつつ つつつ つつつ というかけ声の凶暴が
ちちち ちちち ちちち という爪先の後押しをして
ヘビメタの世界を謳歌する
洋弓を持ち出す者さえ現れて
物陰から狙い撃ちする
百発百中
ひゅーという音に気付いたときは
倒される一瞬で
気付いたときは遅すぎる
阿鼻叫喚の巷

光あるところに影が生じ
低炭素世界は黒影を嫌い
薄墨色の屍体を曝す




自由詩 light the light Copyright あおば 2009-02-17 20:25:21
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