透明宣言
あおば

               090202



正直者の人間宣言
錯覚から生じた擬態
みたらし団子に群がる
蟻を見つめながら
不覚の覚悟を自覚する家の崩壊に伴う不確実な意識
覚醒を促すみたらし団子と神社の森に住みついたミミズクの夜警
峠の茶屋からの道は途絶えがちに分裂を続け
数量を数えながら軽やかなリズムを伴奏する
昭和一桁生まれのハーモニカの賑やかな振動
生まれたばかりの人間宣言を振り込め詐欺の音声に紛らせ
撲滅運動に参加する木訥な集団の素朴な暴力思考に迎合されたハーモニカの分離不能な構造体を慈しむかのように分別不能な家庭ゴミを焼却する処理場の巨大な煙突からゆっくりと立ちのぼるぼんやりとした色に煙る新規契約のお客様に迎合するかのように少しだけ卑屈な口元に笑みをたたえた昼下がり
ATM機の順番を大人しく待つ小市民の短い行列を横切って歩道橋に上り
とぎれがちのファミリーセダンのゆるやかな屋根の曲線に
やわらかい冬の日差しが鈍く反射して
エアコンの不在と
真空管式のレトロなカーラジオを探し回る青年たちの
不透明な時代感覚をせせら笑うかのように
1960年式のトランジスタラジオが
スイッチオンで伝える天気予報の前の株価状況
ノロノロと運転しながら振込詐欺の音声に怯え
長々と続いた首都高速の曲がりくねった渋滞に耐え続けた鉄筋コンクリートの補強工事の痕を目で確認する
下道専用車たちは
道路拡張の恩恵を受けるのと引き替えに失う笑い声の絶えた児童公園の滑り台
ブランコを揺らす風のモードを示す旋風の消失した指標を読み取る視力の喪失を補うみたらし団子に群がる黒々とした背中をおぼろげな冬の日差しが穏やかに微笑む錯覚の意識を振り払いながらながらスーパーマーケットの精算を済ませ
歩道橋を渡り
人通りのない階段道を上り
高級住宅の裏側に続く抜け道を歩く
いつまでも続く錯覚に怯え
腹が空いたと笑う
ハーモニカのような口元が
なんでも食べられますと
素朴な人間のような顔をする
リンチに向かう河原から立ちのぼる分別不能な含み笑いに怯える焼却炉への白っぽい裏通り



自由詩 透明宣言 Copyright あおば 2009-02-02 00:16:52
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