ひとのきかん
あおば

           090130


既刊の本を放り投げ
テーマが古いと諦めた
未完の本が多すぎて
編集室は休む暇もなく
朝から晩まで
缶詰にされた作者たちが
コヨーテのように
ホテルの前のコンビニで
一息入れたいと
担当者におべっかを使っている

機関車が笛を吹き
大勢の奴隷を連れてくる
レインボーの奴等は
光の使い方がうまいから
高く売れるのだと
ヒッチハイクのビーチボーイは
知ったかぶりをメモして
明日の帰還を願う

フィードバック理論によると
ボード線図で描き
求めただけでは不十分
定常的にはOKでも
過渡的にはNOとなることもあり
弛んだ表現よりも
緊張のあまり
口が十分に働かなくなり
なんだか
母音の調子が悪い
分かりやすく言うと
人間語がうまく使えなくなり
カッパ語に変換せざるを得なくなり
帰還の量を僅か減少させる必要もあり
アナログ量の僅かな帰還も嫌い
デジタル化の道を進んだものだから
厳密に言えば
時間間隔が開いて
間隔の隙間が微妙にずれて
感情がもつれたり
損得の軋轢が増したのか
口パク現象が頻繁に起こり
今では、完全な感情の一致は難しいので
いつの間にかみんな諦めてしまった

原稿料を前借りして
地デジ対応の受像機を購入して以来
時間差に鈍感になった作者は
既刊と聞いても少しも驚かず
木訥な編集者の耳を引っ張っては
窓の外のコンビニに出入りする人たちを
意味ありげに指し示し
あれがこれからの購買層だと自信ありげに囁く
入れ墨をいれたのが、ばれそうになり、
公衆浴場の前を素通りするようになったのを
忘れたような顔をして
レジの前で済ました顔をしていたのが昨日のような気がする




自由詩 ひとのきかん Copyright あおば 2009-02-01 13:10:26
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