椿と虎とタルルル・タルナ
亜樹
タルルル・タルナは 虎を 飼いたかった。
だので、タルルル・タルナは たんじょう日に 虎を ねだった。
けれども、タルルル・タルナのおとうさんは タルルル・タルナに 虎を 買ってはくれなかった。
かわりに、虎もようの猫のぬいぐるみを くれた。
タルルル・タルナは、とっても ふまんだった。
タルルル・タルナが 欲しかったのは、虎だ。虎もようの猫のぬいぐるみなんて!
タルルル・タルナは ひどいかんしゃくを おこしたが、それでも 虎もようの猫のぬいぐるみが 虎に かわることは なかった。
しようがないので、タルルル・タルナは 虎もようの猫が、りっぱな虎に なれるように きょういくすることに した。
まず、どうどうと あるくことを おしえた。
つぎに きのぼり。
かくれんぼ。
かりだって おしえた。
くらいよるには、どんなふうに ほえたらいいか、タルルル・タルナ自ら おおきなこえで ほえてみせたりもした。
けれども、タルルル・タルナの虎もようの猫のぬいぐるみは どれひとつだって まんぞくに できやしなかった。
せっかく、タルルル・タルナがタルルル・タルナのおかあさんの 目を ぬすんで、だいどころから じょうとうな 牛の にくを もって来た時だって、ぜいたくにも タルルル・タルナの虎もようの猫のぬいぐるみは、一口だって たべなかった。
タルルル・タルナは ふまんだった。どうしようもなく、いきどおっていた。
あるよる、タルルル・タルナは タルルル・タルナのおとうさんに、そのふまんを ぶちまけた。すると、タルルル・タルナのおとうさんは、わらって いった。
「それは、タルルル・タルナがよくないな」
「どうして?」
「タルルル・タルナの虎は、牛のにくなんてきらいなのさ」
そういうと、タルルル・タルナのおとうさんは いわに出て、まっ赤な椿の花を 一つ もいだ。その花は じょうとうな 牛の にくよりも ずっと 赤くて、それより ずっと うつくしかった。
それを ばくり!とタルルル・タルナの虎もようの猫のぬいぐるみは 食べた。
タルルル・タルナは ひどく まんぞくした。
こんなに きれいな まっ赤な 椿を、すこしも おしむでなく、タルルル・タルナの虎もようの猫のぬいぐるみは 食べてしまうのだ!
これは とっても どうもうな 虎だ!!
タルルル・タルナは、ひどく まんぞくした
でも ときどき、やっぱり 木に のぼってくれないかなと 思ったりもする。