桜並木の詩
小川 葉

 
詩の一行一行に
花を咲かせたような
あの桜並木を歩く

僕には
名前を持たない
姉がいた

姉は木の行間をくぐり
幹の陰に隠れたのかと思うと
花咲き乱れる
か細い枝に立っていて
微笑んで
木漏れ日の中に消えてしまうので
さがしてると
もう次の行に立っていて
音のしない声で僕の名前を呼んだ

姉はいつも
僕より少し先にいた
触れることのできない
少し先に
今も変わりなく
その時も
存在など
していなかったように

桜並木の
詩を読み終えると
どこからか風が吹いてきて
綺麗に花は散る

その向こうには
父と母が
心配そうな顔をしていて

またおねえちゃんと
遊んでたの?
と尋ねるので
僕はうんと頷いて
手をつないで家に帰る

ふりむいて
立ち止まっても
姉はいない
音もなく桜の花が
ただ散っているだけだった
 


自由詩 桜並木の詩 Copyright 小川 葉 2009-01-27 23:12:57縦
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