子供の頃の、僕と父の写真を指差して、四歳の息子が、
「お父さんがふたりいる」と笑ってる。
それから、今の僕を指差して「お父さんが、もうひとりいる」と笑ってる。
今度は少し、不思議そうな顔をして。

生まれたばかりの息子を、抱っこしてる写真を指差して、
「あゆむがふたりいる」とからかうと、
「ちがうよ、それは僕とお父さんでしょ」と笑わずに言う。
だから僕は、今の君を指差して「あゆむはここにいるんだね」と、しみじみ笑う。
不思議なことなど、何もないような顔をして。

さあ、そろそろ、おばあちゃんのお見舞いに行こう。
薬を飲んで、髪が抜けてしまった、たった一人しかいない、
おばあちゃんを指差しに。

わたしたちが今、ここにいることを、確かめるために。