もちろん詩の話をします。
すごく硬度の高い詩を書く友人が、今月の29日にライブをします。
笹田美紀さんという詩の書き手です。
誰にも相談できない自分にただ苦しんでいる夜に彼女の詩を読むと、
その言葉のきらめきと、むきだしにされた孤独感に、
まだ先の孤独感と、その先の鮮やかさを見つめて私はふるえてしまいます。
たとえば、『ジェリーフィッシュ』
ジェリーフィッシュ
心に音楽が満ちるように
いつしか言葉が満ちるんだ
からっぽのグラスに
蛍光色のジェリーフィッシュ
ただ漂って 揺らめいて
いつしか唯一の存在になる
噛みごたえのないマシュマロを
溶かして巨大な塊にして
こしらえたベッドで眠るんだ
窓辺のジェリーフィッシュ眺めながら
音楽の箱にリボンをかけて
決して開かないようにしても
いつしか音楽で満ちるんだ
このろくでもない 愛しい世界は
同じように言葉で満ちるんだ
蛍光色のジェリーフィッシュ
ただ漂って 揺らめいて
いつしか唯一の存在になる
舐めても舐めてもなくならない
不思議な魔法のキャンディーみたいな
読んでも読んでも終わらない
とびきり上等の物語みたいな
音楽で満ちる心と世界。言葉でみちる心と世界。
心の中で完結する世界の中で、揺らめきながら
「唯一の存在」になる「ジェリーフィッシュ」。
かなしいとかさみしいとか言っている穴の開いた風船のような私の心の前で、
壁のように彼女の言葉は立っています。
私の特に好きな詩は、彼女が詩ではないと謙遜している『「おはよう。」』。
一番最後に「おはよう。」と声をかけたくなるこの詩は『ジェリーフィッシュ』のような孤独の中で大きく開いた窓のようです。
「おはよう。」
遺書
を書くには
どのような紙が望ましいだろう
くだらない言葉
を書き連ねたノートの余白
では駄目だろうし
色紙
なんかにしたら
楽しそうでいいかもしれない
が
見当たらないので
遺書
を書くこと
を
とりあえず想像してみた
父さんと
母さんと
姉さんと
姪たちと
あの人と
この人と
今はもう
会えない人と
遠い人と
近い人と
近いのに
手の届かない人と
まとめて書く
のは味気ないので
一人一人に書くとしたら
今から何時間かかるだろう
一文目からうんざりしてきた
遺書
を書きたいほど
どこがどんなに痛くても
そう簡単に死ねないので
朝にはきっと こう言うんだ
それがテレビに向かってでも
それがデンワに向かってでも
それが誰に向かってでも
次の一日が始まるどこかで
笹田さんの詩の一部は彼女のmixiのページで読めます。
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=18258777
(でももしかしたら僕がこの日記を書いたせいで消えてしまうかも。そのときは、ぜひ、ALONEへお越しください)
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笹田美紀さんの詩について語ったページとしては
奥主 榮さんの詩集紹介
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=172530
または、
佐藤yuupopicさんのブログ『空中海岸』の審査雑感「紅白ポエトリー劇場」
http://blog.livedoor.jp/yuupopic/archives/52129653.html
があります。
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笹田さんは、1月29日朗読での初ブッキングライブをします
場所は高円寺ALONEにて夜19時半からです。
http://k-alone.com/
詳しくはALONEのscheduleをご覧ください
http://k-alone.com/schedule/this.html
よろしかったら、ぜひブッキングを笹田さんに入れてください。
もしかしたら、彼女の詩集を持ってきてくれるかもしれません。
無料といったら、ワインを一杯おごってください。