五重塔
あおば

               090118



語感が好いからと言って
のんびりしすぎた
背伸びをしないで居たら
背中が堅くなってしまった

三重塔が美しい姿態を日に曝す
光り輝く甍の上に寝そべっているのは
猫のように身軽な童子
背中を痛めた
五重塔に見切りを付けて
寝返りを打った
転がり落ちる心配をして居る者は
此処には居ない

ふるさとを離れてから
ずっと
屋根の上に住んでいる
童子はなにも言わないが
この辺りの者は皆知っている
屋根の上にもぺんぺん草が生えて
雨漏りが酷く
塔の内部も腐食したが
崩れ落ちる瞬間まで三重塔でいられる
果報者だと噂するので
塔はまだ崩れないで建っている





自由詩 五重塔 Copyright あおば 2009-01-18 07:19:58
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