六角の箱庭
あおば

             090108



ミズーリー州を
ミシシッピー河が
とうとうと流れてゆく
流れていくのは水で
河ではないと
理屈をこねる
ぼくたちの前を
気をつけをして
一列に並んでいる
ミドリガメの子供たち
これから海を渡り
東洋の島国に売られていくのだと
だけど、少しも怖くないのだと
そこには大きな亀は
噛み付く亀は
いないのだ
安心して暮らせるのだと
親から言い含められて
一列に並んで
乗船するところです

船外機を無くしたボートが
ゆらゆらと漂っている
疲れ果てた少年が
ぼんやりとこちらをみている
諦めたのか
オールを取り上げて
桟橋へと向かう
家ではごつい父親が
赤鬼のような顔をして
待っているだろう
こののままどこかにゆきたいと思いながらも
舟の暮らしは無理だと
幼いころから承知している
客船に乗り込んでゆく人たちには
想像できない世界があって
今日も船縁を荒らしているのだ

海の向こうの国のことはなにも知らないが
そこには似たような世界があって
船縁を叩いて暮らす若者が居て
ぼんやりと空をみているだろう

骨組みを失った国には
被災者が集まるところもなく
一列に並ばされて
売られるように
国を出るのだろうか
重いオールを繰りながら
少年は意識の隅で考えている


自由詩 六角の箱庭 Copyright あおば 2009-01-08 22:33:10
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