『堀田善衛 上海日記』感想
里欣
『堀田善衛 上海日記』感想
硬い文体と予想したが、意外とスイスイと読めた。
中国語も英語も多言語もあるが、間違いと漏れ字の中国語も何箇所を見つけたが、それでもそれ自体がどうでもよく不思議に新鮮に感じる文体。
日記でN夫人、以後の堀田夫人との恋を、歴史の変動の中で描かれ、小説としても十分読めるが、一番面白いのは、いろいろな人間像。
中に魯迅のお墓と魯迅の分析などの迫力があるが、共産党、国民党の内戦、ソ連の映画、アメリカの戦争余剰品、上海の闇の人物、上海にきた国際の売春婦・・・中国の小説で分からない上海の世界が、堀田の描写で目の前に繰り広げられる。
青年詩人の広い視点。国際派。
宮崎監督が最も影響受けた作家。