願い
いのせんと


それは、
月の輝く夜ではなく
夕日の下でした

影は長く惰性的に伸びるだけの
夕暮れでした

鳥は何処へ行くのかさえわからない様で
ただ、ただ
東へと、西へと風を読み向かうように
見えました

目で追うだけの私は
ほぅ、と白く息を吐き
流れていく時間を手のひらに
閉じ込めたりもしました

夜が東から這い出てくるから
闇に飲み込まれてしまう前に、君が
振り向いてくれることを
小さく、願っていて

私の乾いてしまった唇に
そっと触れて
温もりを回帰させては
くれないの?

ほら、もうすぐ夜の闇は
君を飲み込んでしまって
もう、困ったように笑う顔も
見えなくなります

私の涙も
君には、見えないままです



自由詩 願い Copyright いのせんと 2008-12-17 15:10:17
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