段差のない家
あおば

            081214



今日もよく晴れている
年末不況の寒さも増して
侍といえども無役の身
30俵二人扶持の昔を偲び
忸怩たる思いを胸に
内職の傘貼り、だるま貼り
和紙を伸ばしての糊付けに
頼るものは妻子の稼ぎのみ

障子の桟を丁寧に拭っては
真新しい障子紙を貼り付ける
嬉しそうな妻の顔
子供たちはぽんぽんと
古い障子に穴を開け
日頃の憂さを晴らしている
そんな昔を懐かしむ
小遣いの宛もない今
傘貼りの注文も絶えて
だるまの方も調子が悪い
坐ったまま
片目を瞑ったまま息を絶えたくないと
みんな思っているのかも知れないが
運が良ければ
うまくいって
両目を開けて
楽しい夜の団らんにも加われるのにと
単衣物にどてらを羽織り
腕組みをしたまま
抜けるような空を見上げている
もう暫くすると
季節風が吹き出して
外に出て
空を見上げるのも
辛くなるので
この僅かな間の日和を愛おしみ
腹の鳴るのを抑えているのです



自由詩 段差のない家 Copyright あおば 2008-12-16 00:58:00
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