夜明けのための即興詩
山中 烏流
*AM4:00
朝が早い
青い鳥は見付からなかった
いつもそうだった
*AM3:00
戸締まりの仕方が分からない
声だけが湖になる
その他は死んでしまった
寂しいと死ぬのは
うさぎではないらしい
テレビの話は真実だと聞くから
きっと、本当なのだろう
だとすれば
私は死ねるだろうか
*AM2:00
小さな頃を思い出す
ポストに入った封書を見ると
母は必ず苦い顔をした
その後はもっと必ず
私を殴った
たまには笑ってほしくなって
一度だけ、封書を隠したことがある
その日も私は
殴られていた
*AM1:00
ほめてほしかった
ただ、ただ
あたまをなでてほしかった
わたしがこどもでいることを
ゆるしてほしかった
それだけだった
*AM5:00
朝の足音がする
本音の十歩手前で
それは止まってしまった
本当は、ずっと
覗いて欲しいのに
*AM6:00
手を伸ばしてみる
温かさの他が分からない
*AM7:00
戸締まりの仕方を思い出す
分からないふりをするのは
いつも、私の仕事だった
この湖で溺れたら
私は死ねるだろうか
それとも
朝に帰れるだろうか
呼吸の仕方だけでいいから
教えて欲しかった