視線、と誰かが言った
たりぽん(大理 奔)


シャッターが切り取るわけではない
それは露光時間を決めているだけで
まぶたのように拒否するのだ
ファインダーが見つめるのではない
いくつかの屈折率を経て
まなざしの限界を教えてくれるのだ

わたしが指で切り取ろうとすると
背後から目隠しをして
答えが一つしかない質問を
あたりまえのように問いかける
とどまってはいけないと諭されるが
とどまることなど出来はしない
この世の中に
停止しているものなど
見えはしない

ビーグルの寝言のように
わたしは美味しい夢を見る
無数の着信ランプが
低い山の稜線で揺らめきながら
星のように明滅して
みんなつながってるなんて大嘘を
絶対座標にしようとする
夢を見る

切り取るわけじゃない
すべてを手に入れられないだけだ
まぶたは拒否するように世界を守って
意識のファインダーを
いくつかの屈折に置き換える
見えているものだけが正しいと
言い切れるひとたちは
見えないものを
正しいかも知れないとは
けっして言わないだろう

聖なる書物に書かれていない
根っこのこぶに救われたひとが
神に感謝するようには
けっして




自由詩 視線、と誰かが言った Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-10-30 01:38:40
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