丁寧な口調
あおば

                 081021




バブルが弾けて
どこかに消えて
倹約の世となった
倹約汁は薄すぎて
塩辛く
高血圧になりそうだ

鳴りやまない空襲警報が大嫌い
煩いから
スイッチを切ってから眠る

グテングテンに酔った
千鳥足で点字ブロックを踏み外し
奈落の底に落ちて
全身打撲で動けない
動けなければ
電動車椅子と
親切な最新型を
勧めてくれる人が居て
電動車椅子に乗って
隣町に行ってみる

歩道から歩道を辿り
夕方に到着したが
暗くてなにも見えない
足下が暗くならないうちに帰るのが人だと諭されて
帰ろうとしたが
真っ暗なので
どこにも
帰ることも出来ない

ここも奈落の底なのかも知れないと思うと
水平移動も
垂直移動も
本質的な違いはないのだと
新しい物理法則に気がついて
万有引力の作用と反作用は
かのような偶蹄目を囲い込み
奈落の底を形成するのだと
文学的に表現していたら
腹の虫がグーと鳴り
鳴りやまなかった空襲警報に呼応して
これから行って参りますの声も聞こえたりして
目の前が真っ暗になり
ほんとになにも見えなくなった

暗くなる暗くなる
暗くなるのだよっと
戯けた笛の音がして
朝帰りの自転車がやって来て
朝が来て
明るくなって
夜が明ける
今日は晴れそうな気もして
ネリカン帰りを自慢する声も聞こえたりして
自動車が押し寄せてきて
踏みつぶされた借金の山で造成した
埋め立て地の貸家札を引きはがし
どこにも無いを連発しながら
明るいう家に帰宅した
電池が切れなかったのが不思議なのですが
水平移動だけだから
可能なんだと
親切にも
だれかが言っていたような気がします
気がしますよっと
丁寧な口調で
念を押されたのです


自由詩 丁寧な口調 Copyright あおば 2008-10-21 06:41:00縦
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