泥酔する三半規管
皆月 零胤

吸いかけのタバコを灰皿に残したまま
別のタバコに火を点けてしまう
もう何杯目かは
忘れた
三半規管がサボりだして
その加速が止められないまま
もう上手く歩けるような気がしない

別に酔っていなくたって
僕というこの人生を
上手く歩いている訳でもない
歩けぬことに変わりがないなら
こうして酔っていたほうがいい

今、優しい言葉を
掛けられたら
僕はきっと泣いてしまう
賭けてもいい

グルグルと三半規管のように回る
この世界で
こころのバランスまでも失って
今、僕は
騙されたほうがまだマシなぐらい
孤独だ

失うものなんかもう
何もない
そう思ってしまう夜に
失えるものがまだ
たくさんあることを
ただ
誰かに優しく教えてもらいたかった


自由詩 泥酔する三半規管 Copyright 皆月 零胤 2008-10-08 19:00:07
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