如雨露
かいぶつ

瞬間は永遠。なんて
詐欺師のような言葉を
知ってしまったばかりに
僕は、日々の過ぎ去る風景の
夥しい原色を水で薄める
さみしい習慣病に
罹ってしまったのかもしれない

輝くばかりのものに
潔白を証明する裏書きはなく
ただ水性ペンで日付が
記されているだけの
消息不明な記録写真が一葉
窓辺に飾られている
さも幸せであるかのように

花を愛する人は
如雨露の底が
すでに破れてしまっている
ことにも気付かないから
枯れていることにも気付けない
薄い布地のような
心だけが満たされて

瞬間は永遠。なんて
詐欺師のような言葉を
知ってしまったばかりに
僕は、日々の過ぎ去る風景の
夥しい原色を水で薄める
さみしい習慣病に
罹ってしまったのかもしれない

僕の部屋の壁紙に似た
淡く滲んだ秋色に
すっかり身を浸されて
今はまだもう少し
色が乾くまでの休憩だと
苦い嗜好品に湯を注ぐ


自由詩 如雨露 Copyright かいぶつ 2008-10-04 18:52:07
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