踊り場/台所
皆月 零胤

西日が射す
階段の踊り場から
子供の声がする
懐かしい声が
あれは
ボクの声だ

 ボクがそこに座り
 マンガの本を読んでいると
 台所のほうから
 タンタンタンとリズムよく
 聴こえてくる包丁の音

 いい匂いがする
 もうすぐ
 ボクの名前が呼ばれるはずだ

かつて
西日が射した
階段の踊り場から
子供の声がする
懐かしい声が
あれは
ボクの声だ

 ボクはそこに座り
 待っている
 太陽を失くしてしまった
 冷たい階段の踊り場で

 音も
 匂いもしない
 台所のほうから
 ボクの名前が呼ばれるのを


自由詩 踊り場/台所 Copyright 皆月 零胤 2008-10-01 18:59:59
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