空中庭園
皆月 零胤

空中庭園の夜で
零れそうな月が
溶けて朧に霞む
夜は秋みたいに
更けてゆくよね

いつの間にやら
緑が赤に変わり
枝から剥がれて
足元に転がって
粉々に消えても

何も変わらずに
ベンチに座って
空を見ているよ
別に誰を待つと
いう訳でもなく

花びらのように
降る雪もすでに
桜に変わったよ
でもまだボクは
立ち上がれない

逆らい続ける力
それがなかった
なんとも惨めだ
何処へも行けぬ
だからこのまま

空中庭園の夜で
蒼ざめた満月が
零す涙に濡れる
銀雲を運ぶ風は
ボクを運ばない


自由詩 空中庭園 Copyright 皆月 零胤 2008-09-26 21:03:40
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