モリマサ公

世界中にできた闇の部分がすごいスピードでずれて
くちぶえが遠ざかり
輪郭線が地平線とまじわりながらかたちをかえて
あたしたちはまだうっすらと汗をかいて
雲の裏側にのびていく光の筋が不意に音をたててちぎれ
倒れたいくつもの植木鉢に張られたままのクモの巣が揺れ
それらにはもうなまえがなくて
捨てられた食器スプーンにフォークがぶつかって音を立て
なくしたものはさがしてもなくて
それでも俺たちは何度も生き残り
交差点に声がうかびあがりクラクションが地面に染み込んで
もう消えてしまったはずの星たちがまだどこかでひかって
まだうまれていない命が瞬間ごとに
ぶれておばけのごとく宙を舞い
空がまた新しく大胆に一枚一枚それぞれに破けて
なくしたものはさがしてもなくて
地図がひろがって道はどれも偶然につながってどこかまばゆく
メトロが徐々に各ホームを離れ加速し
ベクトルがささやきながら旋回し
バイパスはまだまっしろく
産毛たちがつぶやくいくつもの意味に絶望しながら
なお立ちあがり
捨てられた幸福を切り裂き瞬くその輝きを吸い込み
おぼろげながら記憶をたどり吐き出し
なくしたものはさがしてももうなくて
ゆっくりとたしかに虹や生きた子供たちの骨がのびてゆき
ゆっくりとたしかに虹や生きた子供たちの骨がのびてゆく

 


自由詩Copyright モリマサ公 2008-09-22 01:17:02
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