創書日和「夜」 秋のはじまり
ゆうと


窓からさしこむ光が
なんとなく紫色だったので
空を見てみたら
すっかり桃色になっていた

チョコレートを砕いて
ほおばっていた
飲み込む紅茶がすこし
甘くなっていた夕暮れ

秋の虫の音も
ぜんぶ
ぜんぶ
きみもまじって
ぜんぶ
ぜんぶ

とけてゆく
とけてゆく


そんなふうに
かみさまは
あっという間に
暗くして
夜にする
そして
秋にしてしまうのです
それを
目撃したぼくは
ぼくの
アリバイとなって
自由になるのです
今よりいっそう
羽ばたけるのです
きっとそう
きっとそうなんだ
きっとそう
きっとそうだけど
だれも信じない
だけど
ぼくのなかではそうなってる
だから
それでいいのだ
天気予報も占いも
ようは
気の持ちようなのだ
そう
言ってるそばから
雨が降り出す
ぼくは傘を持っていないから
とても身軽なので
走り出すことができる
羽ばたくことができる
だれもいないから
だれもみていないけれど
でもたしかに
ぼくの足は数センチ浮いている


情熱もなにもないけれど
感情と微熱だけはある
それくらい不自由であって
それくらい自由なのだ




自由詩 創書日和「夜」 秋のはじまり Copyright ゆうと 2008-09-11 18:31:06縦
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