泡沫人 
望月 ゆき

なにかを知るはずもないのに
海はそこにいて
呼んでいる
なにかを知るはずもないので
海はいつもそこで
呼んでいる

誰を

誰を

誰か を

きみとはどこから
どんなふうにつながってるの

白く白い
ただ白いだけの粉
の、きみは
色のない風に
足を手を額を持って行かれた
それきり
それきり

海はぐるりとつながってる、って
小さな頃から知っていたし
今も知ってる
なのにきみに遭えないでいるよ
何周したかなんて
きかないで

もっと透明をくれないか
もっともっと 
透明を

透明 を


プランクトンの海では
叫んでも届かない
だってきみは白いのだし
だってきみは散り散りだから
聞こえないんだね
耳をふさぐ手さえないのに

きみを探しはじめて
気づいたことといえば
きみがどこにもいない、って
こと
それだけ

両手と両足と誰かの両手と両足と
数えきれないくらい
ぐるぐると泳ぐ間も
パークで茂りつづける
柳の樹
きみの髪にも似て

それをひとすじ
リーフに垂らしたまま
ぼくは待とう
やがてうとうとと
そうしてぼくは
いつしか海を忘れる

忘れて
眠ったふりをする













自由詩 泡沫人  Copyright 望月 ゆき 2004-07-27 00:52:18
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