終わりに走っていく感覚。
青木龍一郎

僕は1999年だった。
小学校2年生だった。

校長先生は児童たちを校庭に集めて朝会を始た。
校長が教頭から拡声器を受け取り、話を始めようとした瞬間
拡声器からベトベトの汁が溢れ出した。

校庭の砂の上に汁がどんどん垂れていき
それに先頭の背の小さい子供たちから順に群がり
4つんばいの姿でそれを一心不乱に舐め始めた。

教師たちはみんな、口を開けて空を眺めていた。

次の日の朝、学校に行くと、校長が屋上から首を吊って死んでいた。
そして、校舎の壁に赤いスプレーで大きく「卒業おめでとう」と書かれたいた。


教室に入り、優ちゃんに昨日のベトベトした汁を味を聞くと

「なんか味があんまりしないの。
 でも少し甘いの。
 ちょっと口に入れるだけで心臓が飛び出そうになるの」

と言った。
僕は優ちゃんをぶん殴って掃除用具箱に監禁した。
先生に見つかり、僕は御仕置きで、ライターで両手の親指の爪を燃やされた。
爪が苦しそうにゆらゆらしていた。
それは終わりに走っていく感覚だった。




僕達が算数の授業中、一斉に教室を飛び出して
小さく短い足で階段を
2階
3階
4階
と上っていった。
先頭の僕が屋上への窓を思い切り開けて
僕らは屋上へ飛び出した。
僕はつまらなそうに柵に寄りかかった。


屋上から見た町は汚い海のようだった。
黒っぽい波がちゃぷちゃぷと揺れていて
たくさんのゴミが浮かんでいた。



このとき、僕はこの町にタワーを作ろうと思った。
みんなで東京タワーより高いタワーを作ろうと思った。
そこから見た町は汚い海なんかじゃない。



いつかタワーを立てたいね。
終わりに走っていく感覚。











なんか、今日、空気痛くない?


自由詩 終わりに走っていく感覚。 Copyright 青木龍一郎 2008-09-08 22:02:23
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