オルゴール
皆月 零胤

オルゴールの箱を開けると
止まっていた
あの頃の時間が動きだす
もうずっと昔
子供の頃の

何度も
何度も
キリキリと
キリキリと
ゼンマイのネジを巻く
子供の頃みたいに

 目を閉じれば
 時に流され見失ってしまった
 想い出が
 波のように押し寄せる

 風は音を抱えて
 迷いの森の中を彷徨い
 駆け巡り
 子供の頃の僕まで導く

 僕は
 幼い僕に問いかける
 オルゴールの音にのせて

    昔、僕が思っていたような
    優しい大人になれたかな?

 幼い僕は
 何も言わずに
 そっと鏡を差し出す

よく見ようとして
思わず
目を開けてしまう

オルゴールの蓋の裏についた鏡には
見慣れたいつもの冴えない顔


    大丈夫、
    諦めるな
    まだ人生は終わっちゃいない

オルゴールは鳴り続ける
ゼンマイのネジを巻く限り


自由詩 オルゴール Copyright 皆月 零胤 2008-09-04 22:00:10
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