溺れる魚
皆月 零胤

午後からは雨がやんだ

小鳥のさえずりを聴き
その翼を懐かしく思う

雨上がりの空に架かる
あの虹の向こう側には
僕の両親が住んでいる

会いに行く途中の道で
水たまりで溺れる魚が
凍えて震えていたので
そっと陽だまりに置く

スーパーの前あたりで
虹を見失ってしまった
諦め買い物袋を下げた
帰り道に魚の姿はない
無事ならばそれでいい

洋服を着るのに邪魔で
むかし手術で切除した
翼のあった痕が痛んだ
明日もきっと雨になる

また溺れなければいい
そう思い見上げた空を
翼を広げ鳶が飛んでる

その嘴には魚のような
形の影を見た気がした

傷痕よりも胸が痛んだ


自由詩 溺れる魚 Copyright 皆月 零胤 2008-08-09 20:00:01
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