通い道
見崎 光



遊び疲れて眠る夜
朝が待ち遠しくて
ぐっすり夢の中


時間を知らせる鐘の音と
“昨日”が明けたとさえずる小鳥
待っていた割には弱い寝起きを
困った顔で覗く太陽

『おはよう』は始まりの扉
とんぼがキラキラと瞳を誘う
日課と呼ぶほど大袈裟ではない身支度を
マイペースに済ませ
完全に起ききっていない体に
ご飯と味噌汁と目玉焼き

ニュースの片隅に刻まれる時間
分刻みに高鳴りを増す胸
ワクワクのベクトルが頂点を指す頃
フライングに笑いながら
靴を履き終えている


『いってきます』は冒険の扉
5分も掛からない場所を目指す
背中のランドセルで踊る鉛筆の音
勉強は嫌いだけど心地いい響き

上の空に黒板の文字を眺め
チャイムに跳ぶ退屈
真っ黒が元気印
おてんば傷は勲章
叱られ回数、金メダル

『さようなら』は淋しいから
『バイバイ』と笑顔を残して
2・3分で来た道を
10分掛けて帰る一週間



そんな通い道
思い出の
通い道
未だに弾む足どり
幾つになってもこの道は
あの頃の私を覚えていて
丁寧に記憶をなぞらせていく



『ただいま』は思い出の扉
『おやすみ』は夢の扉

“待ち遠しい”を忘れた朝に
揺れる紫陽花





携帯写真+詩 通い道 Copyright 見崎 光 2008-07-21 10:32:01
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