つかれてしまいました
木屋 亞万

私は疲れていました
致死量の仕事を終えて
自宅に帰り着いた2時
夫は先に眠ったようです

机の上に塩むすび
豚の生姜焼き
キャベツのサラダ
豆腐とワカメのみそ汁
レンジで温めると
濃い味が染み渡ります

「お疲れさま」のメモに
ありがとうを書き足して
軽くシャワーを浴びて
夫の眠る寝室へと向かう
起こさぬようにゆっくり
扉を開け部屋に滑り込む
ふ、
と、
違和感を感じて
枕元の明かりを付けると
夫の手が3本ありました
横を向いて眠る
両肩からいつもの腕
背中から首にからみつく
白く細い
一本の

手が
布団に
隠れた
背中から
生えているように
見え、ました

疲れて
いました、私
眠ろうと思って
めくった布団は
夫の足元を
確かめる布団

足は4本に
なっていました
奇妙な程に白く
毛のない細い足
夫のいつもの足に
絡みついていました

私は憑かれた夫を
助けなければと
押し入れから
金づちと釘を
持ち出して
ふらふらと
夜の町を
さ迷いました

疲れていました
憑かれてもいました、私
神社の境内に残された
藁人形を見つけて
夢中で木に打ち付けて
いました、
かいーんカツン
くんキンくんと、釘が
刺さり
「消えろ
消えてなくなれ」と
呻いていました、私

あした私は
修羅になります
帝釈は帰らせません
戦場の用意を
お願いします
もう私は
つかれて
しまいました
負けませんよ、私
絶対に


自由詩 つかれてしまいました Copyright 木屋 亞万 2008-07-18 13:10:09
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