会議場
あおば

                    080707



お天気のことを気にしていれば一年があっという間に過ぎて何ごともなく過ぎてゆく、そんな気分になれるあなたは幸せなお方よと、猫が鳴く。

猫が鳴くから天気がよいかと、窓を開けてみれば、雲ひとつ無い快晴、これでは外に出るしかあるまいと、デジタルカメラをポケットに、姿のない猫に留守番を頼み、玄関の戸をがらっと開けて、外に出てみたら、G8の皆さまが専用機で降りてくる。カバンの中には折りたたみ傘が入っている、不審尋問されたら困ると、目を逸らし、見ないふり。

こそこそと横町から横町へと監視の目を抜けて海の見える岸へと向かう。行き止まりには背の高い防波堤、海を見たい、上がってみたいが手懸かりが無くて上がれない。上がる代わりにカメラがパシャリと音を立て、来て見た証拠の防波堤を記録する。パシャリとね。

自転車を拾って漕ぎだした。不審尋問に合う。盗難車らしい。犯罪の容疑者と見なされて、念入りに調べられる。折りたたみの傘が出てきて、これはなにに使うのだと厳しく問いただされる。今日は生憎良い天気で、雲ひとつ無い。カバンの中に折りたたんで傘を隠し持つなんて、非常に怪しい。デジタルカメラには、厳めしい背の高い防波堤も写っていて、これまた、非常に怪しい。国際テロリストの一員の可能性があるので、念のために拘束した方がよいのではないかと、具申したところ、民間人の意見は聞く耳を持たないようで、すぐに却下された。所用無しに防波堤の近くを彷徨くのは、なぜだか判らないままに、厳めしい顔を見るのは疲れるので、すぐにその場を立ち去った。G8の皆さまは、厳めしい海岸を、見慣れていると見え、疲れを覚えず、立ち去らないで、経済的、政治的課題を討議するための会議場に向かう。

しかし、なにか腑に落ちない。おかしいなと考えだしたら目が覚めた。信じないといけないのだと前から知っていたので目が覚めたのだ。



自由詩 会議場 Copyright あおば 2008-07-07 07:07:59
notebook Home 戻る  過去 未来