口無しの目覚め
木屋 亞万

白い石畳が光に溢れ
行き交う人々の顔が
白色に洗われていく

追い抜いていく
自転車から
黒髪の流れ落ちて

梔子咲き零れる側を
歩く、口無しの恋心
ため息の後に芳香

機が熟しても
開くことのない口にも
いつかは、喜びを運んで

道が景色から浮かび上がり
八重の白、光沢を持つ緑
天高く引き上げてゆく青

私はしあわせだ
目が覚めた
光に顔を洗われて

香りに流れる黒髪
ようやく景色から
人を分離することができた


自由詩 口無しの目覚め Copyright 木屋 亞万 2008-07-01 23:57:34
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