桜桃忌に捕まえて
あおば

                    080619



不動でも
男のロマンと気取っていたが
乗れないバイクはつまらない
どうにかこうにかお金を集め
ユーザー車検も通ったので
玉川上水脇をすたすたと
道路脇の茶店には
桜桃を手に
目の黒い
文芸愛好家たちが集っていたが
立ち寄るのはまた今度と左折して
調布からは
中央道を北上し
久しぶりの
調子の良い音に
アクセルを開け過ぎて
立川のあたりで
覆面のパトカーに停められて
三十キロオーバーで捕まって
反則切符にサインして
ガックリとしながらも
よく見たら
26キロと書いてある
僕のバイクのスピードミター
少し甘いのです
でもよかったなぁと
こういう場合は喜ぶのです
うんが良かったというか
わるかったというか
スピードオーバーという
安全運転義務違反しながらも
反省なんかしてない常習者には
車検更新費用よりも高額な
反則金という
熱いお灸を据えてやる
そう思って毎日道路際に立っている
名脇役は
自動速度違反取締装置オービス
僕の名はオービス
とはいうものの
敵は去る者
逃げる者
ずる賢い
常習者は捕まらない
逃げると言うよりも
避けて通る
スピードを落とす
奴等は
眼が良いのですなと
巾着切りの大親分
仕立屋銀地も
偉そうに
みんなの前で
訓示を垂れる
木曜日
時代を忘れた
ダットサンも
フルスピードで
国技館に向かいます
乗っているのは横綱の
男女ノ川
196センチの大男
力士は大体大男なのだから
断らなくてもよいのですと
隣の親父がつっこみを入れるので
ひょいと身をかわして
得意の出し投げを打つ
もんどり打って倒れる東の小結
悠々と下がりを手にした
男女ノ川の勇姿
意外なほどの
身の軽さ
今ならさしずめ
大関琴欧州




「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作


自由詩 桜桃忌に捕まえて Copyright あおば 2008-06-20 19:00:00
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