手に負えない夏
A道化



手のひらに握り締めた
生まれつきひび割れた蝉のひび割れた雲母
手のひらの中のその震えと光とを
唯一手に負える夏の単位として感じていた


けれど、もしも
手のひらの中の光など単なる幻で
震えているのが手のひらの方なら
この夏の間に


ひとつの昼が永遠に消えてもまだしばらくは消えないひとつの蝉の夏を
閉じ込める手のひらごとわたしを閉じ込める夏
わたしの、手に負えない、夏
その夏の間に


ああ、もしも
手のひらの中の光など単なる幻で震えているのが手のひらの方なら
ひび割れてしまうほどひび割れてしまうほど、ああいっそひび割れてしまうほど
誰でもいい何でもいいどうかその幻であるという事実を震えごと握り締めて下さい


わたしを閉じ込める夏
手に負えない夏、の、わたしの手のひらの中
幻だとしても、この震えと光とを
唯一手に負える夏の単位として、感じていた



2004.7.13.


自由詩 手に負えない夏 Copyright A道化 2004-07-13 10:05:57
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