メダカ風鈴と縁側
望月 ゆき

風が見たいの、と
きみが言ったから
縁側に座っててごらん、と
言ったんだよ
本当はそこじゃなくたって
いいんだ

吊るされた青銅は
お寺の鐘にも似て
思わずぼくは
しあわせ、とかを
願ったりする

その間もずっと
風が見たいの、と
言いながら座るきみ
の黒髪はさらりさらりと揺れ
投げ出した足先を通り過ぎる
雲の影

もたれかかる柱には
もう名前すら消えた
いくつもの横線
隣には
孵化したばかりのメダカが泳ぐ
金魚鉢が

いつしか目を細め
うとうとと首をもたげる
さっきから風の中のきみ
のカーディガンが揺れるたび
一番下のボタンが鉢にあたって
カラン、カラン、と
涼をよぶ



自由詩 メダカ風鈴と縁側 Copyright 望月 ゆき 2004-07-13 09:00:11
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