雨が好き
相良ゆう

雨が好き
世界が濡れて
恍惚の芳香が包む
夕と夜の間に

草花と土が
なめらかな生命を与えられ
喜びの香が
艶やかに立ち昇る

火照る身体を
委ねたアスファルトの上
はしゃぎ疲れた肢体に
清めの香水がそそぐ
静かな宵に

雨の匂いが好き
草の匂い
土の匂い
アスファルトの匂い
雨に濡れた世界は
いつも以上に
「ここにいるよ」と
力強く叫んでいる
強くわたしを抱きしめる

天と地と人の悲涙が
世界を濡らしはじめる
夕と夜のわずかな間
開闢の使者に導かれて
転生する
あたらしい世界の
虜になる


自由詩 雨が好き Copyright 相良ゆう 2008-06-05 18:49:37
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