短いけど結構まじめな話。
久しぶりに風邪を引いてしまったので、よい機会だと思って風邪についてちょっと調べてみました。
調べていくうちに、これまであまりに無批判に使っていた風邪にまつわる言葉について、なぜそのように言われてきたのか分かった気がしたので、説明してみようと思います。
よく「風邪を引いたら人に移せばなおる」といわれますが、もちろんそれは大きな間違いです。間違いというか、認識が浅はか過ぎる言葉です。そういう意味では勘違いな言葉です。これはすでに風邪を引いてしまった人にはとても都合のよい言葉ですけど、健康な人からしたら迷惑極まりない言葉ですよね。それでも風邪を引いたときは冗談も交えつつ、よく使ったものです。今はちょっと反省してます。
さてこの言葉、少し考えを進めていくと多少、的を射たところもあるといえばあるといえなくもないのですが、「人に移せば」という表現はかなり間違った表現です。といって他に上手い言葉があるのかといえばそうではなく、慣用句的に一般に広く受け入れられている言葉だと思うので、無理に訂正するのではなく正しい認識と正しい使用法に基づいて使いたい言葉です。
「風邪を移される」「風邪を人に移す」というときに、いちばん簡単で単純な方法は「せき」ではないでしょうか。もしわたしが誰かに意図的に自分の風邪を移そうと思ったら、単純に考えてその人の前で激しくせきをすればいいのですから。
この「せき」は風邪をなおすのに一役買ってくれます。
せきは急激に空気を吐き出す動作で、気道から異物を除去する働きをします。せきにはたんを吐き出し、気道をきれいにする重要な役割があるのです。せきをすれば風邪がなおるというわけではありませんが、体の中の悪いものを吐き出して、なおす手助けをしてくれます。まあ、これくらいはわたしが言うまでもなく周知のことでしょう。
このとき吐き出された悪いものが人を風邪にする原因を含んでいるので、せきは人に風邪を移す最も単純な手段として、わたしたちに認識されています。そして自分の風邪がなおるタイミングと、人に風邪が移るタイミングが、自分から人へ移ったと認識するにちょうど良いタイミングであることが多いために、「風邪は人に移せばなおる」という認識、あるいは言葉が生まれたのでしょう。
ということで、厳密に言うなら、「人に移せばなおる」のではなく、「人に移った頃になおることが多い」のです。どうして「人に移せば」なんていう悪意に満ちた言葉が生まれたのか、これでなんとなく分かった気になっていただけたでしょうか。ちゃんとこのことを理解したうえで使わないと、ただの嫌な人ですから、これを読んでくださったみなさんは、用法用量を正しく守って、健全なユーモアのある人になりましょうね。
間違っても素のまま服用、もとい悪用しないようにしましょう。
参考:メルクマニュアル家庭版
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/index.html