あなたがおちてくる
因子

午前四時五十七分
うつくしくひかりに濡れた朝のなか
しっとりと艶やかな群青に紺碧にきんいろのそらのなかを
あなたはおちてきました


たったひとり



東京は潰滅しました
炎をあげる間もなく
東京は焦げてゆきました

ひとびとはちいさなちいさな声で
なにごとか云いました
…だれにも届かない




わたしは東京の
端っこ、の方であなたを感じていました
端っこでもわたしの皮膚は
ずるずるになりました
わたしのからだは
すこしとけていました
だけどわたしは
東京の端っこで、あなたを感じていました




おちてきたあなた
わたしのあなた
そのひかりがわたしを殺しても
あなたはわたしのあなた
あなたは


たったひとりでおちてきた




あなたの血は
地面に染み込むのでしょうか
どこかへ還ることが、
できるのでしょうか





あなたがわたしを殺した

あなたを殺したのは
いったい何だったのでしょう







うつくしくひかりに濡れた朝のなか
しっとりと艶やかな群青に紺碧にきんいろのそらのなかを


あなたは
たったひとりで、おちてきました


自由詩 あなたがおちてくる Copyright 因子 2008-04-05 00:47:58
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