君は信じないかも知れないが、僕はひとりでだってきちんと最期のダンスを踊れるんだ
因子

寝てる間に熔けて口いっぱいに溢れた金属のようなチョコレートが嚥下しても嚥下してもしきれない
私の前に横たわる地獄とはそういった種類のものなのです
貴女は私の腹のなかを覗いたのか?クスコーできちんとのぞいて見たのか
君は賢いからとてもそんなことはできないだろう
君は賢いから、ルネサンスの絵画の中のはだかをみて
芸術性も官能性すら理解せずにやにや笑う男児のような
そういう真似は出来ないでしょう

ほうら内視鏡もなんにもいらない
こうやって私の腹の中を覗くんだ
びっくりするほど空洞だろう?
首の付け根からお腹の少し下あたりまで
私はすっかり空洞なんだ
まるで真赤ながらんどうなんだ
 


ぴくぴく笑う内壁から
樹液のように滴り落ちる
果実のように、熟れた胃袋や
熟れた心臓や
熟れたいろいろがぶらさがっていて
その熟れたいろいろから
あまい汁のように滴り落ちる
ぽたりぽたりと反響する
 

鍾乳洞をみたことがあるかい
私は沖縄でみたことがあるよ
ちょうどこんな感じに石筍は
滑らかで細かな凹凸を表面に描いて
つねにてらてらと濡れているんだ
 

それらのものがもうすぐ熟しきって爆ぜて種を撒き散らすとき、
血液や細かな肉片を飛び散らせたとき、
君は側に居てくれるのかい
聡明な君のことだからきっとNOと答えるのだろうね


私はきっと折れたり曲がったり潰れたりするよ
最後のダンスを共に踊ろう


君はきっとNOと答えるのだけれど


自由詩 君は信じないかも知れないが、僕はひとりでだってきちんと最期のダンスを踊れるんだ Copyright 因子 2008-04-01 21:15:53縦
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