隣日
ヨルノテガム




タモリさんがサングラスを外して
ニュースの現地リポーターへ転向した
昼の番組はロウ人形で声は出ている
万事不都合は消えていた

そうですね、

そう言えばうちの九十になったおじいさんは心臓やら肺やら
悪いのでここ十年あまり動かないのであるが
2階のわたしの部屋まで平然と上がってきた
大丈夫?とハラハラしていると特に用事も無かったようで
前を向いたままの姿勢で階段を後ろへ下りていった
特別なことは目を閉じればあるものだ

習慣なんて捨ててしまえ

十年以上前、付き合っていた女の子をバレンタインの日に
フッてしまったことがある
せっかくのチョコを
受け取れないと返すことで意思表示をしてしまったのだ
好き過ぎてうまくいかなかったのだが、
変な別れ方をしたせいで変に忘れられない面影なのだ
面影を得るためだけの別れに思えて
遠い日は何も変わりたくないのだった

雪の日が年に一、二度あるかないかのこの街が
3日、4日とショートケーキやミルフィーユのような
段層のある大雪に埋もれると、慣れないわたしは雪降ろしで
転落し、怪我人1名として タモリさんの現地リポートに
紹介されている

お気をつけ下さい、と実況は締められ

「そうですね!」、とわたしより大声で返事をする声が聞こえる

近くに住む昔のあの女の子が もうお母さんになって
子供たちを従え、遅くなったチョコを 何の拍子か思いつきか
わたしに届けに来てくれる
わたし以外の人にも配っているようだ
見たことがない大雪の景色の、
見たことのない大体の街の外観の中、
電車もバスもご丁寧に走ってはいないけれど
行き先は雪をかきわけて在るようで

年月はわたしをどこまでも迷わそうと仕掛けてくる











自由詩 隣日 Copyright ヨルノテガム 2008-03-01 19:00:46
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