もくれんのくも
たりぽん(大理 奔)

誰か、などとごまかすのはよそう
あなたを、思うときの空だ
湿った雪雲が切れていく
灰色の向こうに広がる薄い青
きっと強く、遠くのあなたを想っている
灰色と青色が近いのは空のせいだ

  往復切符は買わない
  同じ場所にしかかえれないから
  切符も買わずに飛び乗る
  生きるとか
  死ぬとかじゃなく
  辿り着くための旅だ

空も雲も月も照らされるものだから
あなたを想う心に似ている
照らされて無様な影を這わせる
この胸の奥の
満たされることがない風景

薄い青色の空には
きまって木蓮のかおりがする
(それは春の幻想)
南に流れていく
湿った雪雲の輪郭をなぞって
途切れとぎれに
思い出させる

僕は振り返らない
時折の気配にふり仰ぐだけだ
そして照らされた空が
湿った雪雲を流していく



自由詩 もくれんのくも Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-02-12 01:26:10縦
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