雨降り回帰
A道化



声帯で
黙殺された孤独は
肺に
積もったようでした


声帯で黙殺された孤独は肺に積もったようでした
そして、やがては
床板に屈した体を
どうしても規則的に置いてゆく呼気に乗り
ローテーブルを超え
カーテンを伝い
硝子をすり抜け
曇り空へ浸透して、ゆく
目を閉じたまま、私は
荼毘に付される亡骸に対するように目を逸らしていました


夏が一時的に黙祷を始めた日暮れには
明日は朝から断続的に雨がふるでしょう、という声だけ
それだけが世界の音で
明日は朝から断続的に雨がふるでしょう
明日は朝から断続的に雨がふるでしょう
ああ、だから
翌朝もまた空き瓶と共に転がっている私をもう誰も見つけなくていい
夏が一時的に黙祷を始めた日暮れに世界の音が暗示するように
黙殺した孤独が、自縛霊となる前に帰る場所を見つけて明日には安らかに
空中分解して雨の振りをして明日には安らかに、安らかに私に降りそそぐ


今から、私、
そう思うことができます
夏が黙祷してくれる日暮れには
世界の音が暗示するように



2004..6.26


自由詩 雨降り回帰 Copyright A道化 2004-06-26 09:48:54
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