ノート(ひとつ しるべ)
木立 悟





いつかどこかへ
去るときが来て
道を奏でて
道を奏でて


奇妙にしばられた
音をひとつほどいて
粒のかたちに返し
行方を見守った


ひるがえる午後の
背のほうから冷えて
とまどいとおそれ
変わる標


鉄と鏡に映る鉄
ひとつのはざま ひとつの声
かたちはひとつの光をなぞり
かたちはさまようものとなる


うたの跡があり
道になり
水のなかへゆく
水のなかをゆく


海辺の火と羽
光のひとさじ
真昼を灯し
夜へ至る


また影を残してきた
見えないものたちの足もと
轍の交差
空を編む標


道が聞こえ 道を去るとき
こぼれ落ちる行方の群れは
響きを響きにたなびかせながら
遠去かる背にたたずんでいる















自由詩 ノート(ひとつ しるべ) Copyright 木立 悟 2008-02-05 20:17:27
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