みかん
乱太郎

みかんの皮をむくと
いくつかのいのちが並んでいる
土にまけば
また
みかんといういのちが
生まれていたにちがいない

くやしがっているだろうか
人の手が汚いと
叫んでいるだろうか
人の唾液は汚いと
怒っているだろうか
人の世界に土はないと

みかんが見ているもの
人には見えない
みかんが話していること
人には聞こえない
みかんが好きなもの
人には分からない

繋がれることのない間柄
遠い恒星のように

テーブルの上で
最後の光を放って


みかんをいただこう
たまたまここに居合わせた
みかんの甘い汁を

僕のいのちを繋げるため
土に還るまで


自由詩 みかん Copyright 乱太郎 2008-02-05 13:02:11縦
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