[ミルクを飲んでフラフラの僕は、空気のような空想を描く]
あおば

              080107




机龍之介は居るか、
槍のような声が、
ヘルメットを突き破る。

耳を塞いでアクセル全開、
オーパヒートのエンジンは、
金切り声で焼き付き寸前、
蹌踉と大菩薩峠を越えた。

下りに掛かると、
今度は一直線、
息を吹き返したかのように、
バイクは力を取り戻し、
音も軽く、
ぐんぐんスピードを増して、
もう、
此処まで来れば、
弓の矢だって追いつけない
パルス式の、
自作の電気式、
回転計の針も、
真ん中あたりで、
落ち着いている。

砕け散った岩石を横目に、
曲がりくねるカーブを、
下っていくと、
黒い森が近づいてきて、
今度も、
一瞬のうちに飲み込まれ、
頭の中が真っ黒に、
静まりかえる。

机龍之介の声も聞こえない。

弾けるように跳び起きると、
雪が降っている。

チェーンのないバイクでは、
走行不能と悟り、
電車の駅に歩くと、
電車はまだ走っている。

走っている電車に跳び乗って、
先頭車両に移り、
ワイプする隙間から、
前を見ると、
雪は激しくなって、
一筋の並行線路以外、
すべてを、
白一色に覆い隠しているが、
机龍之介はおるかの、
声だけは絶え間なく、
悩ましく、
解答用紙の提出を促した。






自由詩 [ミルクを飲んでフラフラの僕は、空気のような空想を描く] Copyright あおば 2008-01-10 08:38:56縦
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