ホイットニーがんばれ
鴫澤初音
長いカーテンの隙間から日が漏れる。
鳥は朝を歌い始めて久しい。
タケシは目覚めた。
そして言った。
パンツである。断然パンツである。
そして枕元の携帯電話に手を伸ばし親指でボタンを2回押した。
ショートカットである。
「おいユキオ」
「なんだ、こんな朝に」
7時である。
「ドライブしようぜ」
タケシもユキオも最近免許を取ったばかりである。
「どこで?」
「M駅のあたりで」
ユキオは飛び起きる。M駅ときた。
断然パンツである。
30分後、タケシとユキオはレンタカーで背の低い車を借りる。
M駅まで走り、階段下につけると朝8時である。
遅刻しそうな女子高生が階段を駆け上がる。
自動車はここでは低い、バレない椅子としてのみ機能する。
ひらひら跳ねるミニスカートの下にパンツが見え、隠れ。
しかし敵もしめたもの、見られるのを承知で、
紺色のブルマをはいている。
「むむゥ」
「むむゥ」
同じく遅刻しそうな顔で女子高生が自転車を立ち漕ぎしている。
足を前に曲げて、ペダルを踏み込む、
ひざの上でミニスカートがひらひら踊る。
その下にパンツが見え、隠れ。
しかしやはり敵もしめたもの、紺色のブルマをはいている。
車のシートに深く腰掛けてふたりは覗き込み、
ふたりに気づきはしないまま、自転車は車を通り過ぎ、
バックミラーで姿を追うとなんと後ろからもブルマが見える。
ふたりをせせら笑うかのようにミニスカートの下で見え、隠れ。
「くゥ」
「何たるミニだ!(苛立ちながら)」
「白が見たい」
「白が見たい」
次々と通り過ぎていく自転車。駆け上がっていく女子高生たち。
100人過ぎる。200人過ぎる。ことごとく紺、紺である。
「こうなってくるとくじ引きみたいだね」
「運試しといこうじゃないか」
物事を捉えなおすと楽しくなるとはこういうことだ。
300人が過ぎた。もう一時間である。
レンタカーの練習もせずに、
返しにいく時間が迫る。
女子高生はいまだにだれも、
ふたりの視線に気づかない。
私はさっきからコンビニの隅で立ち読みをしながら
ふたりを観察しているのだが、
残念そうにエンジンをふかし始めるふたりを見て
階段の下へと走り、
階段を駆け上がる。
スカートが踊る。
もちろん、
純白である。