クリスマスは忍者でござる
小川 葉

クリスマスの
イルミネーションの陰には
忍者がひそんでいて
みんなのおこないや
愛の深さを偵察しているのでござる

担当する区域を
偵察し終えると忍者は
忍び足で誰に気づかれることもなく
すばやくお城に引き返すのでござる

お城には
お殿様ではなく
サンタクロースがいるのでござる

そして聖夜が訪れる頃
さてそろそろ
と言ってサンタクロースは
街にプレゼントを配りに
トナカイを引きつれて
出かけるのでござる

夜が白々とあける頃
忍者は始発で家に帰ることが
ゆるされるのでござる

山の麓の家に着くと
子供たちはまだ眠っていて
その枕元にプレゼントを
そっとしのばせるのでござる

夜を徹しての任務のためか
多少眠いのでござるが
子供たちが目を覚ますまで
眠りたくはないのでござる

子供たちが目を覚まし
プレゼントに気づき
サンタさんありがとう
と喜んでいる頃には
次の任務の時間でござる

赤い服を脱いで殿様は
サンタクロースの任務を
無事終えたからでござる

お城に帰ったら
次はお正月の準備でござる
その後は七草がゆの準備でござる
さらにその後はバレンタインデーの準備でござる
その後はホワイトデーでござるござる

戦国の世からすれば
争いはなくなったものの
この世の中
また別な意味で忙しくなったものでござる
下天は夢か
などと申された殿様もいたようでござるが
さすがにトナカイに扮していた馬たちも
なんだかため息のようなものを
吐いているようでござる

しかしこれも
世のため人のため
平和のためでござる
拙者、これからも頑張るでござる

それでは拙者
忍び足で失礼するでござる
また会う日まで
もう会わないとは思うでござるが
どうかご達者で
にんにん、でござる


未詩・独白 クリスマスは忍者でござる Copyright 小川 葉 2007-12-24 23:22:36
notebook Home 戻る  過去 未来