妙な味のする指舐め
鴫澤初音

 まだふっきれていない電線を、空の下から眺める。

 僕等、まだ生きていてつまらないことばかり考える。
 
 例えばいつもなんど かけても留守電にしかならないのは

 君が僕を嫌っているのか、それとも君は電話には出ない主義なのか、

 そんなことさえ、会ってしまえば口を閉ざして 少しもうまく

 君に話せなかった 腹いせに睨みつけたりして 本当に嫌われて

 しまったような気がして 君が

 僕を好きになることなんてない そう 

 確信めいた予感を常々 胸に描いていたくせに 駄々をこねる子ども

 みたいに 何度も 何度も 君の家へ電話 する 僕は

 僕を愛せないで いた ずっと

 そう




 僕は予兆に満ちた海を見ている 僕等が指で触った未来は直ぐに
 
 過去になってしまうのは 何故 だろうか  あれほど

 笑い合った日々がもう 思い出せずにいる

 通りすぎていく 未来が 還ってこないまま 歩き出しては

 泣いて 霞んでいく光景を 見えない眼で 探していた それは

 君の 姿  忘れていて 忘れていない もの

 
 空が青かった 単純で汚れのないもの

 美しかった 光が指の隙間を通りぬけていった いつか


未詩・独白 妙な味のする指舐め Copyright 鴫澤初音 2007-12-24 02:28:54
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