オタクの慎二
atsuchan69

慎二、おまえは
ド近眼で彼女もいない。
牛乳瓶の底みたいな
強烈に度のはいったレンズが映す、
ちいさな瞳の瞬くそれは
カビンさとジコチュウ――

世間知らずの見た
遠まわしの空腹みたいな
それともアレを
ただやりたいだけとちゃうか?

プライドだけ一人前で
殴られて、暴力反対等とほざき
そのあとで泣きながら
恐るおそる手首を剃刀で傷つけ、
翌日にはケロッとした顔で
また詩の朗読かよ!

それがゲー術というなら
まー、慎二待ったほうがよい
自費出版はやめろ
ビンボーで、
一生独身かもしれない慎二。

おまえの書いた戯言を
いったい誰が読むというのだ?

それから慎二、
まえにも言ったとおり
ファッション雑誌くらい買えよ
他者との係わりのなかで
正しい自分のポジションを知り、
あくまで礼節を知った上で
好き勝手に生きろ

なあ、慎二――。
おまえ暴力反対だったよな
でもさ、俺たちの生活と安全は
じつに血なまぐさい事実で支えられてんだぞ
あー、うー、南北問題っていうか
世の中ってやつはは常に
弱者と強者で成り立ってんだ

聞いちゃいないだろ、慎二。
何をいっても無駄だよな、
おまえの詩なんかより、
やっぱり倖田來未の歌の方が
心にゾクゾクする何かが伝わるぞ

一度でいいから恋愛くらい・・・・

いや、童貞の慎二。
きっとおまえじゃ無理だぞ
こんど、リスカするとき
ぜひ兄ちゃんにも教えてくれ
両腕を鉈でぶった切ったるから

心配はいらない、
父ちゃんも母ちゃんも電気だ

ええと、なんか急に寒うなったワ。

風邪ひかんように
街一番のガンコな仕立て屋で
別珍の背広でも拵えろ
小金をやるから、
それで女も買え
相かわらず兄ちゃんは凶暴で逞しい

だが慎二。
本当は金じゃなく
俺のこの逞しさを分けてやりたい
イジケタ詩を書くな、
それよりも【おめこ】しまくれ

早く帰ってこいや
でなきゃ、
ビンボーな詩とともに
死んじまえ

――慎二。

兄ちゃんは
それでもおまえの、

たった一人の読者だ







未詩・独白 オタクの慎二 Copyright atsuchan69 2007-11-12 00:18:12
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