耳を澄ます
石田 圭太

しーっぃぃ 静かに
静かに

耳を澄ます

耳を澄ますほどにやって来る
夜があるではないか

届こうとする

届こうとする夜が
やって来るではないか


いくつかの笑顔と空腹で
気が狂いそうな輪の中にいる

抜け殻ばかりを売る店で
目を奪われるばかりだ、人々は

知る光を
与えてほしい
ただ泣いているだけで
何にも見えなくて
ごめん

答えのようなものを
音が音でなくなる音を
聞き取る確かな
耳が欲しい

名前がないだけで
居ないのと同じだ
ただ生きているだけで
何にも言えなくて
ごめん


今、しとしとと雨が降り
私の人間を濡らしていく

醜く垂れ下がった贓物に
芽が生える、空に向かう

向かった先に




向かった先に耳を澄ます

しーっぃぃ 静かに
静かに

人間を聴いている


自由詩 耳を澄ます Copyright 石田 圭太 2007-10-31 01:22:26縦
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