月をついばむ魚
渡 ひろこ

森林の中
ひっそり潜む
小さな月


あさい眠りの
はざ間を泳ぐ
黒い魚影が


ゆらり と
身体をしならせ
ついばんでいく


冷たい魚の接吻に
吸いとられていく
一オクターブ上の神経


ぬぺりと
むきだされた
月の肌は


弱々しくあえぎ
木々の間から
dimデミニッシュの不協和音を叫ぶ


聞こえぬふりをして
走っていく足元に
からみつく魚影


痩せ我慢の
変ロ長調で
歌えども


魚は
旋律さえも
せせら笑って啜り


病んだ月が
ますます
満ちて


巣食っていく
私の頭の
森林に



自由詩 月をついばむ魚 Copyright 渡 ひろこ 2007-10-28 00:09:51
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