パラパラ漫画
小川 葉

パラパラ漫画の
途中のひとこまが足りなくて
ぎこちない様子は
まるでぼくの人生のようだ
足りない日記の一ページのことは
思い出せないけれども
思い出せないふりをしているだけで
ほんとうはわかっている
足りないひとこまの
静止画のように
あの日きみは
ぼくとすれ違った
パラパラ漫画のように
ぎこちない様子で
二人すれ違った瞬間の
ぼくのひとこまは
やがて日記を
やぶることになるあの日の
中途半端な気持ち
そのものだったから
くやしくて
思い切って
ふりむいて
すれちがいざま
気持ちを伝えた
そうしてパラパラ漫画の
足りないひとこまはうめられて
やっと完成して
何度も何度も
パラパラしては笑って
あれは過ぎたことだと
やっと笑えるようになった
笑えばよかったんだ
おかげで
きみを失ったことに気づくまで
十年もかかった


自由詩 パラパラ漫画 Copyright 小川 葉 2007-10-27 00:25:34
notebook Home 戻る